事務所情報

事務所名
一級建築士事務所 中本設計事務所
代表者
代表 中本武志
所在地
162-0056
東京都新宿区若松町38-20 アトリエ夏目坂
電話番号
03-6825-2801
FAX番号
03-6825-2802
設立
2023年7月12日
事業内容
建築設計及び監理、建築設計に関するコンサルティング業務

代表者プロフィール

職歴

1995年2月〜

大谷研究室に在籍、建築家の大谷幸夫に師事

大谷研究室在籍中に担当した主な作品

  • 山口県民文化ホールいわくに(シンフォニア岩国)新築工事設計監理業務
  • 国立京都国際会館 アネックスホール、地下鉄連絡通路 新築工事設計監理業務
  • 金沢工業大学 7号館 工学設計棟 新築工事設計監理業務
  • 国立環境研究所 循環・廃棄物研究棟 新築工事設計監理業務
  • 石川県立七尾高等学校 新築工事設計業務
  • 国立環境研究所 ナノ粒子健康影響実験棟 新築工事設計監理業務
  • 金沢工業大学 6号館 ライブラリーセンター 内装改修工事設計監理業務
  • 千葉市美術館 拡張整備設計監理業務

2023年3月

大谷研究室が解散

2023年7月

一級建築士事務所 中本設計事務所を開設、代表を務める

資格
  • 一級建築士
  • 宅地建物取引士
  • 伝統再築士

 

代表者メッセージ

千葉市美術館の見学

大谷研究室に在籍中、私はさまざまな貴重な経験をさせていただきました。
入所して間もない頃、竣工間近の千葉市美術館を訪れる機会がありました。
千葉市美術館は、昭和2年に竣工した旧川崎銀行(設計:矢部又吉)を保存するため、新たな建築物で覆う鞘堂方式が採用されています。
市民ホールとして再生され、上階は美術館と区役所として使用されています。
市民向けの見学会では、大谷幸夫先生が旧川崎銀行の歴史や鞘堂方式について説明され、来場者が熱心に耳を傾けている姿がとても印象的でした。

シンフォニア岩国での意匠設計

山口県民文化ホールいわくに(シンフォニア岩国)では、私は主にコンサートホール内部の意匠を担当しました。
大谷先生のスケッチをもとに図面を起こし、油土を使った粘土模型を作成しました。
先生は、その模型に手を加えながらデザインを整え、それを再び図面に反映する。
この作業を繰り返すことで、最終的な形が決まっていきました。
図面では、物の形状・位置・素材を伝える作業を行い、打ち合わせには平面図・立面図・断面図を整えて臨みました。
当時、まだCADが普及しておらず、トレーシングペーパーに手描きで作図していました。
そのため、何度も修正した箇所の紙は薄くなり、破れてしまうこともありました。
こうしたスタディの跡が、設計の過程を物語っていました。

粘土模型を用いた設計スタディ

大谷研究室では、設計のスタディに油土を用いた粘土模型を多用していました。
粘土模型は、形状がアクロバティックになりすぎると、重力によって垂れ下がったり、もぎ取れてしまうことがあります。
このため、粘土模型で成り立たない形状は、実際の建築設計においても構造的に無理があることを示しており、形状の見直しの指標となりました。
国立京都国際会館のアネックスホールの増築設計でも、粘土模型を用いたスタディを行いました。
アネックスホールは既存棟と同様に、柱と外壁が10対42の勾配で斜めの形状を持ち、粘土模型でも非常に安定していました。
一方で、宅地造成許可手続きや計画通知手続きに長い時間を要したことも、印象深い思い出の1つです。

金沢工業大学とのご縁とプロジェクト

石川県にある金沢工業大学は、私が最も長く担当させていただいているプロジェクトの一つです。
不思議なことに、私は石川県とさまざまなご縁があります。
例えば、私の従妹が東京から金沢近郊に嫁いでおり、身近な土地として親しみを感じています。
また、高校時代の修学旅行でも石川県を訪れました。
旅程は、岐阜県と福井県を経て石川県を巡るコースで、金沢では兼六園を散策し、羽咋市の千里浜や輪島の朝市を訪れたことを覚えています。
特に、金沢城の石垣は圧倒的な迫力があり、加賀藩の当時の威光を感じさせるもので、とても印象に残っています。
金沢工業大学の敷地の周りには石垣があり、地元で産出される戸室石で築かれています。
この戸室石は、金沢城の石垣に使用されているものと同じです。
私は設計事務所を立ち上げた初年度に、金沢工業大学の石垣を改修するプロジェクトを担当させていただきました。

7号館の工学設計棟の新築工事

金沢工業大学において、私が担当させていただいた最も大きなプロジェクトは、7号館の工学設計棟の新築工事における設計監理業務でした。
金沢工業大学では、昭和40年からキャンパスの造営が行われており、1号館から6号館までは大谷研究室の先輩方の尽力によって既に完成していました。
その流れを受けて計画された7号館は、延床面積12,115㎡の大規模な建物であり、設計から工事監理の完了までに2年3か月を要しました。
当時は、羽田空港から小松空港へ飛行機で頻繁に往復しながら業務を進めていました。
7号館のエントランスホールには、大谷先生が上空から眺めた加賀の景色をモチーフにデザインしたレリーフが設置されています。

国立環境研究所での設計監理

国立環境研究所は、筑波研究学園都市に位置する研究施設です。
私は、循環・廃棄物研究棟新築工事と、ナノ粒子健康影響実験施設新築工事の設計監理を担当しました。
これらの施設は、持続可能な社会や環境の在り方に関する実験・研究のための場所です。
実験に用いる設備は非常に重量があるものが多く、クリーンルームの設置など、特定の実験環境に適した建築計画が求められました。
特に、動物実験を行うエリアでは、室間の気圧差を制御する必要があり、これに対応した空調設備が求められました。
また、研究者の方々が快適に過ごせる環境作りにも配慮しました。
中庭に植栽を配置することで、研究施設内にも自然を取り入れ、リラックスできる空間を確保しました。
さらに、研究室のところどころに窓を設け、研究の合間に外の景観を楽しめるように設計しました。

千葉市美術館の改修プロジェクト

大谷研究室は長年にわたり活動を続けてきたため、特に初期の作品においては、増築・修繕・改修計画が頻繁に行われてきました。
かつてはスクラップ&ビルドが主流の時代でしたが、近年ではストック&リノベーションの考え方が徐々に広がりを見せていると感じています。
そのような流れの中で、2017年の暮れに、冒頭で触れた千葉市美術館の改修計画が始まりました。
これまで千葉市中央区役所の複合施設として運用されてきた美術館を、美術館専用施設へとリニューアルするプロジェクトです。
このプロジェクトでは、美術館としての機能を十分に発揮できるよう、展示動線の最適化、荷重条件の見直し、消火設備・空調設備・電気設備・防火区画の改良を行いました。
そして2020年3月、新型コロナウイルスの感染拡大を横目に、予定通り竣工を迎えることができました。

独立と新たな挑戦

2023年3月、大谷研究室は解散となりました。
その後、同年7月に自身の設計事務所を開設し、現在に至ります。

創業への想い

幼少期を振り返ると、絵を描いたり、バルサ材で乗り物の模型を作ったりして、夢中になると寝食を忘れて没頭していました。
小学校高学年の頃、実家の新築工事があり、在来軸組工法で作業する大工さんたちの見事な仕事ぶりに目を奪われました。
工事現場の余った材料で椅子を作ったこともあり、次第に「将来はものづくりの仕事がしたい」と思うようになりました。

ものづくりには様々な分野がありますが、建築の場合、その多くがその土地に建つ唯一無二の存在です。
長い時間をかけて、人々の活動や動線を考え、綿密な図面を描き、多額の資金を投じて建物を完成させる。
こうしたスケールの大きな仕事に惹かれ、建築の道へと進みました。

建築設計は、どれほど経験を積んでも、時代と共に学び続けることが不可欠な仕事です。
デザイン以外にも、プロジェクトのスケジュール管理、コスト管理、法令に関する知識、工学や新しい材料に関する知識など、多岐にわたる能力が求められます。
それらは日々更新されているため、情報収集能力も重要です。
建築の専門家として、私の知識や経験を必要とされる方々のために、力を発揮したいという想いで創業しました。

未来への展望

現在、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが各分野で進められています。
​建築は社会への影響が大きく、中長期的な視点で公益性を意識して活動することが不可欠です。​
依頼主の方々と、建築が及ぼす社会的影響を共有しながら計画を進めることが、信頼関係の構築につながります。​

近年、ウェルビーイング(Well-being)という概念が建築分野でも重視されています。
​建築空間を利用する人々の身体的・精神的健康や、社会とのつながりなどの観点から、満足度や豊かさを評価する指標が重視されています。​

今後、社会はますますスピードを上げて変革していくことでしょう。
​建築設計のプロとして、時代の流れに柔軟に対応することが、依頼主の方々からの信頼につながると考えています。

人々が幸福を感じる環境や建築空間とは、利用者の身体的・精神的健康を促進し、社会とのつながりを育む場であると考えます。
​そのためには、周囲の環境と調和させることが重要です。
​建物が自然や街並みと調和し、互いに尊重し合う関係を築くことで、利用者にとって心地良い空間が生まれます。​
私たちは、依頼主の将来を見据え、周辺環境への配慮を重視した設計を行い、豊かな空間づくりに尽力していきます。