金沢工業大学は、石川県野々市市に位置する私立大学です。
1957年に創設された北陸電波学校を起源とし、北陸電波高等学校の開校を経て、1965年に金沢工業大学が開学されました。
「教育付加価値日本一の大学」を目指して、教育、研究、サービスの卓越性を追究しています。
建学綱領には、高邁な人間形成、深遠な技術革新、雄大な産学協同の3つを掲げています。
学部は、情報デザイン学部、メディア情報学部、情報理工学部、バイオ・化学部、工学部、建築学部の6つで構成されています。
大学院は、工学研究科、心理科学研究科、イノベーションマネジメント研究科の3つで構成されています。
キャンパスは、扇が丘キャンパス、やつかほリサーチキャンパス、白山麓キャンパス、虎ノ門キャンパスの4つがあります。
扇が丘キャンパスの北校地は、大谷幸夫が主宰する大谷研究室の設計です。
1969年に竣工した金沢工業大学1号館は、学生、教員、事務職員によるインフォーマルな人間相互の接触を誘発する空間として、可能な限り大きな広場を建築内部に作り出すよう設計されました。
2019年、モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織「ドコモモ」の日本支部「DOCOMOMO Japan」に、金沢工業大学1号館が登録されました。
金沢工業大学について
金沢工業大学の詳細
竣工 / 改修 | 1969年6月 / 2025年3月 |
設計 | 大谷研究室 |
所在地 | 石川県野々市市扇が丘7-1 金沢工業大学 1号館[地図] |
アクセス | 北陸鉄道石川線 野々市工大前駅 徒歩11分 |
建築面積 | 3,281㎡ |
延床面積 | 8,449㎡ |
階数 | 地上5階・地下1階 |
主な素材 | RC |
施主 | 学校法人 金沢工業大学 |
担当したプロジェクト
金沢工業大学 1号館 3階と4階の階段教室 内装改修工事設計監理業務
改修前(階段教室90席)
改修後(階段教室120席)
改修後(廊下)
背景
2024年初頭、1号館の階段教室の改修に関するご相談をいただきました。
階段教室は、建物の中心に位置する内部広場(中央ホール)の上部に配置されており、90席の教室が3つ、120席の教室が1つ存在します。
1号館全体は、大学としての必要な機能を満たすフォーマルな空間と、人々の自然な交流を促すインフォーマルな空間が計画的に配置されています。
内部広場(中央ホール)を中心に、ゆとりのある空間が設けられ、吹き抜けを通じて他のフロアを見渡すことができます。
今回の改修では、これらのコンセプトを継承し発展させることを目指して基本設計を行いました。
AV機器・OA機器
階段教室では、最新のAV機器の導入に伴い、様々な技術的課題がありました。
講義でプロジェクターを使用するため、学生の視線の仰角制限やスクリーンの高さを計算しました。
また、学生が使用するノートパソコンの電源や、ネットワーク接続のためのLANケーブルの配線を収納するため、フローリングと床スラブの間に空間を設けた二重床を設計しました。
照明
今回の改修では、黒板を見る際の眩しさ(グレア)や、ノートパソコンの画面への映り込みに配慮することが求められました。
天井の照明器具はノングレアタイプを採用し、照明器具が許す限り深さを持たせることで、直接的な光源の視認を抑制しました。
元々存在していた高窓(ハイサイドライト)は、黒板や画面への反射光を防ぐために塞ぎました。
階段教室後方にある廊下との間仕切りをガラスパーテーションに変更し、自然光を取り入れることで教室内の明るさを確保しました。
空調
階段教室は、その特殊な折り上げ形状により、上部に暖気が滞留しやすく、空調の効率が低下するという課題がありました。
また、高窓(ハイサイドライト)からの冷気が下降するコールドドラフト現象も発生し、室内環境の快適性が損なわれていました。
さらに、空調の立ち上がりを迅速にすることも求められました。
今回の改修では、室内の気積(空気の総量)を抑えるように設計し、暖気の滞留を防止しました。
天井は、空調機器の設置スペースを確保し、メンテナンス性に配慮した形状に変更しました。
什器
改修前の階段教室では、5人掛けの机と椅子が配置されており、中央席への出入りが困難であるという課題がありました。
今回の改修では、3人掛けの机と椅子を2人で使用することを想定し、学生がパーソナルスペースを確保できるように設計しました。
机の下にはパイプ棚を設置し、3人掛けの中央席は実質的に荷物置き場として活用できるようにしました。
廊下
階段教室はフォーマルな空間であり、講義が終わると学生が教室を離れてバラバラになってしまうことに、どこか寂しさを感じていました。
今回の改修では、階段教室後方にある廊下との間仕切りをガラスパーテーションに変更しました。
教室と廊下の間に視線が通ることで、空間の連続性と開放感が生まれ、廊下はインフォーマルなラウンジ空間へと変貌しました。